エンジンは内燃機関であるため、わかりやすく言えば金属の箱の中で幾千もの部品が動作しています。
当然、大半の部品は金属製であり動作するためには潤滑する必要があります。
さらに燃焼を絶え間なく行っているので冷却の必要もあります。
この潤滑と冷却を行っているのがエンジンオイルです。
エンジンオイルには他にも役割があり、エンジン内部の汚れ(例えばスラッジと言われる金属の粉)を溜まらないようにしたり、サビを抑制したりと非常に重要なものです。
このエンジンオイルが、何らかの原因で規定量よりも大幅に少なくなってしまったら大変なことになってしまいます。
サビや汚れというファクターはエンジンの不調に直結する可能性は少ないですが、潤滑不良や冷却不足はエンジンにとって大打撃です。
潤滑不良により金属製の部品は摩耗が著しく進み、部品によっては燃焼室の気密不良や燃焼室にオイルが入ってしまうことによって、マフラーから多量の白煙を吐いたりします。
このようにエンジンにとってエンジンオイルは非常に重要な物なのです。
今回はこの重要なエンジンオイルの「漏れ」について解説します。
オイル漏れはどうやってわかる?
この場合、自分で定期的に車の点検をすることが非常に重要となります。
難しいことはなく、取扱説明書に従ってウィンドウウォッシャー液や冷却水、タイヤの空気圧やハブナットの増し締め等を行うついでに、エンジンオイルの量も確認すれば良いのです。
正常であれば、そうそうオイルが減ることはありません。
とはいえ、出発前に毎回点検を行っている方はそういないと思います。
オイル漏れもどこから漏れているかによって症状が変わってきます。
エンジンオイルが内部から外部にもれてしまっている場合、エンジンルームを除くとエンジン本体ににじみが確認できます。(部位によっては確認できない場合があります。)
よくあるのは、エンジンのシリンダーヘッドとシリンダーブロックの境目のガスケットが劣化して漏れているパターンです。
シリンダーヘッドとシリンダーブロックの境目以外にも、クランクシャフトという部品のオイルシールから漏れてしまうこともあります。
ヘッドカバーガスケットからのオイル漏れもよくあります。
漏れがひどい場合、エンジンを伝って地面に滴る場合もあります。
軽傷の場合は、一晩駐車しても一滴二滴程度なので注視しなければ気が付かない場合があります。
重症化してくると、漏れる量も増えてくるのでオイルのシミも確認しやすくなります。
この他にもエンジン内部で、燃焼室にオイルが漏れるパターンもあります。
この場合、ピストンリングという燃焼室の気密性を確保する部品、またはオイルリングと言うピストンの潤滑を確保したり、余分なオイルを掻き落とす部品が不調の場合に起こります。
燃焼室にオイルが漏れるとガソリンと一緒にエンジンオイルも燃焼します。
正常の場合排気ガスは透明ですが、(水蒸気によって煙が出ているように見えることもあります。) オイルが燃えると、白煙が出ます。
この白煙は水蒸気のようにすぐ消えずに、しばらく辺りに漂います。
また臭いも強く独特の臭いがします。
オイル漏れの原因は?
オイル漏れはガスケットの劣化が要因で外部に漏れる場合と、エンジン内部の部品が要因で起こるオイル漏れがあると説明しました。
ガスケットの劣化が原因で外部に漏れる場合
外部に漏れが発生する場合、ヘッドカバーガスケットやシールなどのゴム製ガスケットの劣化が要因で発生します。
基本的にガスケット等のゴム類は経年により劣化します。
そのためいつかは交換が必要になります。
負荷の大きい運転を長時間行う、真夏などにアイドリングで長時間放置したりなど、高温になることが多いと劣化が進みやすいでしょう。
また、ヘッドガスケットが抜けてオイル漏れが発生することもあります。
ガスケットが抜ける原因は、オーバーヒートによるエンジンのゆがみの場合が大半で、通常の使用でエンジンが歪んだりヘッドガスケットが抜けることは考えにくいでしょう。
エンジン内部の部品が要因の場合
次にエンジン内部の部品が要因の場合ですが、オイル交換などのメンテナンスを怠ると発生しやすくなります。
先にも説明しましたが、エンジンオイルはエンジン内部を洗浄する作用があります。
燃焼に伴って発生したカーボンやスラッジなどを落としてオイルフィルターで濾過(ろか)します。
しかし長期間オイル交換をしなかったり、フィルターを取り替えなかったりすると、フィルターを通過せずにエンジン内部に戻ってしまいます。
結果、オイルはどんどん汚れてしまいます。
この汚れがピストンリングやオイルリングという部品に堆積するこで、固着して従来の機能を果たさなくなっていきます。
ピストンリングの場合、機密性を確保できなくなりオイルが燃焼室に入ってしまいます。
もちろん燃焼室に入ったオイルはガソリンと一緒に燃焼しますが、オイルは燃えると白煙が発生するので、これにより排気管から白煙を吹くようになります。
オイル漏れの修理代は?
ヘッドカバーガスケットであれば車両にエンジンが載った状態で交換可能ですので、金額はさほど高くはなりません。
部品代も約2,000円~と高額ではありません。
交換作業自体も30分ほどで終了します。
ディーラーの場合、一般的な国産4気筒エンジンであれば5,000円~7,000円ほどで交換可能です。
しかしV型や水平対向などのエンジンの場合、ヘッドカバーが両サイドについているので、工賃や部品代は2倍になってしまいます。
次にクランクシャフトオイルシールの交換ですが、クランクシャフトはエンジンを貫通しているので、横置きエンジンの場合は左右、縦置きエンジンの場合は前後に存在します。
縦置きエンジンで説明すると、前側にはクランクシャフトプーリーが取り付けられていて、後ろ側にはトランスミッションが繋がっています。
後ろ側のシールを交換する場合はエンジンを車両から降ろしたり、トランスミッションを下ろしたりと、重整備となり、一般的に後ろ側の方が工賃が高くなります。
部品代は500円~とかなり安いです。
クランクシャフトシール自体部品が小さいため、この程度の値段になります。
気になる工賃ですがクランクシャフトプーリー側であれば、約10,000円~25,000円、トランスミッション側の場合は前側の約2倍の工賃がかかります。
次にヘッドガスケットですが、こちらは部品代が5,000円~となっています。
これもヘッドカバー同様、V型エンジンや水平対向エンジンの場合は2倍かかります。
気になる工賃ですがディーラーの場合、一般的な4気筒エンジンで90,000円~と少々高額になります。
更にシリンダーヘッドを取り外すため、オイルや冷却水も交換となります。
このため100,000円を超える金額がかかることが予想されます。
V型や水平対向の場合は約2倍の金額がかかるでしょう。
最後にピストンリングやオイルリングの交換ですが、部品自体は1,000円~5,000円程度ですが工賃はかなり高額となります。
オーバーホールするのと大きく変わらないため、一般的な4気筒エンジンでも30,000円~かかります。
まとめ
- 車のオイル漏れを放置すると、潤滑不良により金属製の部品は摩耗が著しく進み、マフラーから多量の白煙を吐いたりすることがある
- オイル漏れはガスケットの劣化が要因で外部に漏れる場合と、エンジン内部の部品が要因で起こるオイル漏れがある
- 車両にエンジンを載せたまま修理できる場合と重整備と呼ばれる工数の多い修理の場合で、工賃が大きく変わるため事前に見積もりを取って確認することを推奨
ヘッドガスケットやピストンリングの交換は非常に高価になります。
しかし、日頃のメンテナンスを怠らずにしっかり行うことで防ぐことが可能です。
お気に入りの大切な愛車に長く乗るためにも、日頃のメンテナンスを忘れずに行いましょう。