ガソリンスタンドでよく「無料点検しますよ~」と声をかけられますが、知識のない方は無料で点検してもらえるので、いい機会だと思います。
普段の使用であれば2年に1回 (4ナンバー車は1年に1回) の車検で十分ですが、タイヤやエアクリーナーなどは路面の状況によって摩耗具合や汚れ具合は異なるので、見てもらうことは大切だと思います。
その際、必ずと言っていいほど言われるのが、「水抜き剤を入れたほうがいいですよ~」の言葉。
500円ほどでできるため「よくわかんないけど、とりあえずお願いします」という方も多いと思います。
実際この水抜き剤がどのような効果があり、本当に必要なのかどうかを説明したいと思います。
水抜き剤って何?
水抜きというくらいなので、水を除去するとか無くすといったイメージだと思いますが、そのとおりです。
ざっくり言うと、ガソリンタンクからエンジンの燃焼室間に存在する水分を除去するものです。
ガソリンの中にも水分が混じっています(かなり少ないですが)。
普段の使用であれば、ほとんど気にするレベルではありません。
外部から水分が入ってくる要素は、雨の日の給油の際に給油口から水が入ってしまったり、タンク内の空気に含まれる水分が結露したりするぐらいかと思います。
なので、正直なところエンジンまで水分がいくことはほとんどありません。
水抜き剤の主成分はイソプロピルアルコールというアルコールです。
ガソリンに水は溶けませんが、アルコールは水にも油にも溶けます。
普段は分離している水とガソリンをアルコールの力を使ってガソリンと水を混ぜて、一緒に燃焼させてしまうという考えです。
水の悪影響は!?
一番大きな影響はやはり「錆」でしょう。
先でも説明しましたが、水とガソリンは混ざらないため、燃料タンク内では分離した状態で貯蔵されています。
水は比重がガソリンより重いため、ガソリンタンクの底部に溜まることになります。
そうなると、水とタンクが直接触れるため、錆が発生しやすくなります。
また最近の車両は、直噴エンジンという、燃焼室内に直接燃料を噴射するエンジンが主流になってきています。
直噴エンジンはポンプによって燃料を高圧に圧送するため、燃料配管がゴムではなく、金属になっています。
また、燃料を圧送するポンプも金属製です。
そういった金属部品にも錆が発生する可能性は0ではありません。
水抜き剤は必要?
燃料ラインに用いられている金属部品に錆が発生する可能性があると書きましたが、常にガソリンが通っているので可能性はかなり低いです。
水が多く溜まる可能性があるのは燃料タンクです。
といっても、燃料と水が分離して溜まるほど、水が混ざってしまうことはほぼないでしょう。
最近の自動車の燃料タンクは軽量化や、複雑な形状に対応するために、樹脂製のものが多くなってきており、錆に対しての対策は必要ありません。
また、鋼板製の物も内側に錆対策が施されており、錆を心配する必要はありません。
以上のことから、水抜き剤は殆ど必要ありません。
通常の使用で錆の心配があるのであれば、必ず取り扱い説明書に注記してあるはずです。
実は水抜き剤はデメリットもある
実は水抜き剤にはデメリットもあるのです。
先にも説明しましたが、水抜き剤の主成分は「イソプロピルアルコール」です。
実は自動車部品に多く用いられている、ゴムや樹脂、そして更には金属がアルコールと相性が悪いのです。
特にゴムは弱いです。
燃料関係ではインジェクターという燃料を高圧噴射させる部品の機密を保つために、ゴム製のパッキンが用いられており、他にもガソリンタンクと燃料ポンプの配線の間等複数用いられいてます。
もちろん耐油性の高いゴムが用いられいていますがアルコールとなると話は別です。
一年に一回程度の水抜き剤の使用であれば気にすることはありませんが、スタンドに行って勧められるたびに入れていると、劣化が起こっているかもしれません。
エンジンの出力が上がることはない
ガソリンとアルコールで熱量を比較すると、ガソリンのほうが熱量は高いです。
単純に言うと燃えやすく、燃焼の際のエネルギーが高いということです。
ですので、水抜き剤を入れてエンジンの調子がよくなったり、パワーが上がったりすることはないのです。
「水抜き剤を入れてから調子がいい」「パワーが出ている」という方は、プラセボ効果のようなものです。
なぜ勧めてくるのか
単純に利益のためです。
ガソリンにプラスして何かサービスを付加しないと、売り上げは良くならないのです。
好立地で給油客を独り占めできるような環境であれば、ガソリン販売だけで充分です。
タイヤを売ったり、車検をしてもらったり、エンジンオイル交換や洗車など、カーライフに関わる部分でサービスを付加して売り上げを上げているのです。
水抜き剤も同様。
ガソリンタンクにササッと入れるだけでいいので、工賃等も掛からず、売りやすいのです。
最後に
- 結論から言うと水抜き剤は必要ない(最近の燃料タンクは樹脂製のものが多くなってきている。また鋼板製の物も内側に錆対策が施されているため)
- 水抜き剤はデメリットもある。水抜き剤の主成分は「イソプロピルアルコール」というもので、自動車部品に多く用いられているゴムや樹脂、そして更には金属がアルコールと相性が悪い
- ガソリンスタンドで勧めてくるのは単純に利益のため(工賃等も掛からず売りやすい)
今まで「よくわからないけどとりあえず…」で入れていた方もたくさんいらっしゃると思います。
しかし、ここまで説明した通り、最近の自動車には必要性は高くなく、デメリットになる部分もあるということがわかっていただけたと思います。
入れるか入れないかは皆様次第ですが、今回身に着けた知識も絡めて検討していただければと思います。