テレビやインターネットでニュースを見ていると、高齢者が運転する自動車での事故が多く報道されています。
通常では考えられないような事故ばかりです。
コンビニに突っ込んだり、いきなり後退して人を轢いてしまったりと本当に心が痛くなるような事故ばかりです。
そして、強く印象付けられたのが、「プリウスでの事故」。
ネットを覗いてみると、車側に問題があるとの意見や高齢者の運動能力の低下などさまざまな意見が書いてありました。
本当に車が悪いのか?高齢者が悪いのか?今回は「なぜプリウスの事故が多いのか」です。
※あくまで販売台数から見える個人的な見解です。
プリウスの特徴とは
トヨタが、世界で初めてハイブリッド車として販売した車両が「プリウス」です。
当時はガソリンやディーゼルエンジンが当たり前だった時代に、エンジンとモーター両方を使用して走る車で、環境への影響の少なさや燃費の良さを世界中にアピールしていました。
プリウスという車名は、ラテン語で「~に先立って」という意味があり、まさにハイブリッド車として世界に先立って販売された車両なのです。
外観はCd=0.30という空気の流れを意識したデザインとなっており、車両底面のフラット化も施されています。
内装は、足踏み式の駐車ブレーキやコラム式のシフトレバーによって、フロントのシートのサイドウォークスルーを可能にしています。
世界を驚かせた初代プリウスが2代目へと進化したのが2003年。
初代からボディサイズが拡張され、5ドアハッチバックスタイルに。
従来のプリウスから「エコとパワーを同時に進化」(引用:トヨタ公式)を狙いとし、エンジンとモーターに改良を施し、システム最高出力が10%、最大トルクでは13%向上を実現。
世界最高レベルでの燃費や排出ガス性能を確保しつつ、高出力を実現させています。
また、このモデルから「エレクトロシフトマチック」を採用し、指先でジョイスティックのようなシフトレバーを操作する動作だけで、シフトポジションを選択することができます。
P(パーキング)レンジ選択時はシフトではなく、P(パーキング)ボタンを押します。
このシフトはまさにプリウスの代名詞となるギミックとなり、それだけには留まらずハイブリッド車のラインナップが当然となっている、現在の日本のハイブリッド車の代名詞となっています。
2009年には3代目に進化。
2代目から更に燃費と出力を向上させ、2.4L車並みの出力と世界トップレベルのCd=0.25という空力性能と相まって、驚異的な燃費と動力性能を手に入れました。
また、ソーラーベンチレーションシステムやリモートエアコンシステムを採用。
ソーラーベンチレーションシステムは、ルーフに搭載したソーラーパネルにより発電を実施し、その電力を使用し車内の換気をする先進的なエアコンシステムです。
そして2015年、4代目のプリウスが発売。
外観では従来のプリウスとは全く別物といっていい、近未来を感じさせるデザインとなりました。
このモデルでは、プリウス初のE-Fore(電動四輪駆動)を採用。
そのほかにも、表面温度上昇を抑える塗装など先進的な装備が満載で、初代プリウス発売以降まさに「世界のハイブリッド車に先立つ」自動車となっています。
プリウスの事故が目立つ理由
ネット上には高齢者の車両事故ばかりで、車両のつくりが事故の要因とする記事が多くみられますが、果たして本当にそうなのでしょうか。
特にシフトに要因があるという記事を多く見かけますが、「エレクトロシフトマチック」は2代目プリウスから採用されており、2003年には市場に登場しています。
プリウスの事故が目立ってきたのはここ3年程と筆者は感じていますが、それ以前からエレクトリックシフトマチックは存在しており、このことからシフトだけに要因があると決めつけてしまうのは早合点でしょう。
また、他銘のハイブリッド車にも同様のシフトが採用されていることも事実です。
では、なぜプリウスの事故が多く報道されているのでしょうか。
筆者は高齢者のプリウスによる事故が多い要因に、販売台数が関係あると考えます。
街中で初代プリウスを見かけることは少なくなりましたが、2代目以降のプリウスは頻繁に見かけます。
2代目の発売は2003年、3代目は2009年と2代目では16年、3代目では10年経過しています。
3ナンバーで大人4人が余裕をもって乗車でき、ハイブリッドでランニングコストも安く、何よりも幅広い世代から選ばれています。
販売台数が多く安心感を感じられるプリウスは、大きな車両が不必要な当時の子育てや仕事が落ち着いてくる50代や60代に多く選択されました。
また、新車販売台数ランキングも常に上位にランクインされており、幅広い世代から選択される車種ということは数字からも読んで取れます。
当時の50代60代も高齢者となり、身体能力の低下が否定できません。
特に聴覚の衰えは運転動作に大きく影響すると考えます。
エレクトリックシフトは、シフトポジション選択後はシフトのみ中立の位置に戻ります。
つまり、シフトを選択する動作以外は常に同じポジションにシフトが位置します。
ということは、今選択されているシフトポジションはメーターでの確認か、後退の際はR(リバース)を選択しているアラーム音で確認となります。
日常的にシフト位置の確認やアラーム音を意識できていない場合、うっかり違うシフトを選択してしまった場合、気付く可能性は圧倒的に低くなると感じます。
また、シフトを間違って選択してしまった後の対処も高齢者の場合、遅れることは容易に想像できます。
以上のことから、高齢者によるプリウスの事故が多い要因は、
- 「販売台数が多く、全販売台数当たりの分母としての台数が多い。」
- 「当時の購入者が高齢者となり、身体能力の低下や緊急動作に遅れが多くなった。」
という大きく2つの理由があると考えます。
使いやすさ=安全ではない
今や当然の装備となったAT(CVT)やどのメーカーも取り入れているステアリングスイッチ、先にも触れたトヨタでいうエレクトリックシフトなど、快適かつ使いやすい装備はどんどん追加されてきます。
しかし、高齢者にとって使いやすい装備=安全ではないようです。
90年代前半ではATによる誤発進が問題となりました。
これはクラッチ操作なく、発進できるAT(CVT)のメリットが招いた、デメリットです。
クラッチ操作が必要なMT車では誤発進は考えられません。
また、ステアリングスイッチも手元で空調からオーディオなど操作できるため、一見便利なものですが、スイッチの配置などを覚えていないと手元を注視することとなります。
動体視力が低下している高齢者の場合、手元と前方の安全確認の両立は難しいと考えられます。
万人に使いやすい言わばバリアフリーの車両も、実は穴が潜んでいると筆者は思います。
最後に
高齢者やプリウスの事故が多く報道されていますが、報道されているのは氷山の一角で高齢者ばかり事故を起こしているわけではありません。
追突事故や安全確認不足など、いつ誰が事故を起こしても不思議ではありません。
誤発進抑制装置や安全確認しやすいデザイン、レーダーやカメラを用いた先進安全技術等、多く研究実験が進められていますが、これらは絶対ではありません。
やはり運転者の安全確認が、最も効果的なのです。
技術を過信することなく、「大きな凶器となりうる1トンを超える鉄の塊を運転している」という自覚をもち、日々安全運転を心がけてほしいと思います。