現代の自動車の動力源は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンのほかに、ハイブリッドや電気自動車などの電気を用いるものまで、さまざまあります。
特に燃料を燃焼させて動力を得るガソリンエンジンやディーゼルエンジンにはエンジンが高温になるため、ラジエータと冷却水を用いて冷却しています。
今回はこの冷却水を交換する際にかかる費用や、DIYで交換を行う際の手順や注意点などを紹介します。
冷却水とは?
冷却水とは文字のまま、冷却する水です。
エンジンは常にガソリンや軽油を燃焼させているため、熱が発生します。
冷却せずに運転を続けるとあっという間に高温になり、エンジンを潤滑するオイルの粘度が低下するため潤滑不足に陥り焼き付きという事態を招きます。
冷却水はエンジン内部にある、ウォータージャケットという水路を通り熱を吸収します。
その後ラジエータという部品に送られて、走行風により冷却され再びエンジンの内部に戻ります。
冬場は、この冷却水の熱を車内の暖房に使用します。
この冷却水は、複数の機能が要求されます。
まずは凍らないことです。
都内23区などでは、冬場の一番寒い時期でも氷点下5℃に達するかどうかというレベルですが、東北や北海道その他山間部ではそれ以上に冷え込みます。
そのような状況下でも、安定して液体であることが求められます。
次は防錆作用です。
エンジンには金属が用いられいるため、内部に錆が発生すると十分な強度を確保することが難しくなります。
そのためにも、液体には錆を発生しないことが求められるため、冷却水には防錆剤が添加されています。
他にも冷却率を向上させるため、攪拌(かくはん)による発砲をおさえる消泡剤等が添加されています。
これらの機能を満足するために、冷却水にはエチレングリコール等が用いられます。
エチレングリコール自体は無色透明ですが、種類を判別するためや誤飲防止の観点から、緑やピンク、赤などに着色されています。
冷却水はエチレングリコールの濃度によって熱伝導率が変わります。
濃度が高すぎると熱伝導率は低下します。
薄すぎてもいけませんが、濃度が低いほうが熱伝導率が高くなります。
一般的に、寒冷地では濃度を濃くする必要があるでしょう。
濃度は通常30%~60%で使用されます。
30%ではおよそマイナス15℃まで対応可能です。
新車で購入した車両のLLC濃度は一般的に30%といわれています。
冬場、寒冷地で車両を使用する場合は、60%を目安に濃度を上げる必要があります。
60%以上は、冷却効率が低下するためお勧めできません。
また、冷却水の主成分であるエチレングリコールは毒性があるため、交換後は適切に処分する必要があります。
一般の方は処分する方法がないので、ディーラーやガソリンスタンド等にお願いする必要があります。
蛇足ですが、LLCをなめると甘いです。
交換時期について
一般的に冷却水のことはLLC(ロングライフクーラント)と呼ばれており、エンジンオイルと違い交換サイクルは長いものです。
トヨタにおいては、スーパーLLCというLLCを発展させた高性能LLCが主流となっています。
このスーパーLLCは7年、16万キロいずれか早い方で交換となります。
車検でいうと3回目の車検(乗用車)で交換ということになります。
この数字から見てわかるとおり、ほぼメンテナンスフリーで問題ありません。
しかし、一般使用に限った話です。
サーキット走行や積載状態で登坂路を走行する機会が多い場合は、早めに交換しても問題ありません。
日常点検ではリザーブタンクの冷却水の量を確認しましょう。
H~LやMAX~LOWの間に収まっていれば問題ありません。
補充する場合はHやMAXに合わせて補充するといいでしょう。
頻繁に冷却水が減る場合は、冷却水漏れやエンジン内部で燃焼室に冷却水が漏れていたり、故障が疑われるので整備工場で点検してもらうことをお勧めします。
交換費用について
冷却水交換のみの作業であれば5,000円~7,000円程で可能です。
部品代(冷却水)は含まれませんが、おおよそ1L/1,000円ですが、希釈して使用するため、そこまで高額にはなりません。
車種によって使用する量が変わるので確実なことは言えませんが、一般的な乗用車で排気量が2Lクラスであれば、10,000円あれば足りるでしょう。
カー用品店で交換してもらう場合は、2,000~3,000円で交換してもらうことが可能です。
ディーラーと違う点は、値段とメーカー純正のLLCを使用しているかどうかです。
こだわりがない方であれば、カー用品店で交換してもらうのが一番リーズナブルでしょう。
自分で交換する際は、ホームセンターなどでLLCを購入することが可能です。
ピンキリですが、トヨタ純正スーパーLLCだと1Lあたり1,000~1,500円程のようです。
必要量が4Lで30%の濃度で使用する場合、1.2L必要になります。
自分で交換できるの?
交換自体は難しくありませんが、交換後のエア抜きが難しく感じられるかもしれません。
エンジン内部の水路は非常に複雑で一度液体を抜いて補充した場合、エアがたまりやすいです。
ラジエータ内部も同様です。
一般的に、補充後エンジンをかけたままにしてエアが出なくなることを確認するのですが、それだけでは抜けきっていない場合があります。
少しアクセルをあおったりして流量を変えて確認することも必要になります。
それでは一般的な交換手順をご紹介します。
①エンジンを冷却する
走ってきたばかりの状態で、ラジエータキャップを外すと噴水のように冷却水が吹き出します。
間違いなくやけどをしますので、ラジエータキャップを触ってぬるいと感じるぐらいまでは待ちましょう。
②アンダーカバーを外す
通常、ラジエータ下部にドレンコックがありそこから抜き出すことができます。
車種によってはアンダーカバーを外すことなく、ドレンコックにアクセスできたり、抜くことができる場合があります。
③ドレンコックをあける
ドレンコックの下に、容器を準備したらドレンコックをひねって冷却水を抜きます。
完全にエンジンが冷めたことを確認して、ラジエータキャップを外します。
多めのウエスで包んでひねることで、あふれてきても飛び散ることを防ぐことができます。
車種によっては飛び散る可能性があるので、注意が必要です。
抜き出した後は、冷却水が出てこなくなるまで待ちます。
④新しい冷却水を用意する
冷却水が抜けきるまでの間、新しい冷却水の準備をしましょう。
先でも説明しましたが、LLCは希釈して使用します。
ネットで検索すると、エンジンに対して必要な冷却水量がわかります。
仮に6L必要な車両の場合30%であれば1.8L、40%であれば2.4L、60%であれば3.6LのLLCが必要になります。
希釈は水道水で問題ありません。
⑤ドレンコックを閉める
ポタポタとしずくが落ちるぐらいになったらドレンコックを閉めましょう。
周りをウエスでふき取り、パーツクリーナ等で洗浄しましょう。
汚れたままの場合は、雨の日などしずくと一緒に地面に落ちて油が広がってしまいます。
⑥アンダーカバーを戻す
外した時の逆の手順で戻しましょう。
ボルトやビスの付け忘れに注意してください。
⑦冷却水を注入する
ラジエータキャップを外したところから、冷却水を注入します。
専用の漏斗がありますが、ペットボトルでも代用することが可能です。
水などの2Lペットボトルを半分に切ってキャップを外し、ラジエータの口に立てます。
そこからゆっくり、新しい冷却水を補充します。
様子を見てあふれる前に注入をやめます。
その後、リザーブタンクにも補充します。
⑧エア抜きをする
再度ラジエータに漏斗を立てて、少し多めに冷却水を入れておきます。
その後エンジンを始動します。
この時、エアコンの温度設定はマックスで吹き出し口の向きはデフロスターにします。
これで、暖房用の水回路にも冷却水が回るようになります。
しばらくすると、気泡とともにラジエータに冷却水が注入されていきます。
アイドル状態でエアが出てこなくなったら、少しアクセルをあおって回転を上げます。
これにより水流が変化し、内部に残っているエアが出てきます。
⑨ラジエータキャップを閉める
エアが出てこなくなったらラジエータキャップを閉じます。
その後しばらくエンジンを掛けておきましょう。
ラジエータホース(ラジエータにつながっている太いパイプ)を握って、ある程度固くなっていることを確認します。
⑩不足分を足す
エンジンを止めたらひと段落です。
少し走行して、次の日にリザーブタンクを確認します。
一晩エンジンを冷やすことにより、リザーブタンクから不足分がエンジンに吸われます。
その状態でリザーブタンクに適量残っていれば問題ありません。
LやLOWレベルより下にある場合は再度補充します。
まとめ
- 交換時期は特になし。ほぼメンテナンスフリーで問題ないため、日常点検ではリザーブタンクの冷却水の量を確認するようにしましょう
- 冷却水交換のみの作業であれば5,000円~7,000円程で可能(車種によって使用する量が変わるため事前に料金を確認する)
- 自分でも交換は可能だがエア抜きが難しく感じることも。少しでも不安のある場合はディーラー等の整備工場やカー用品店に依頼しましょう
ほとんどメンテナンスフリーで問題ない冷却水ですが、ウォーターポンプからの水漏れや、エンジン内部のガスケットの不良など、LLC自体に問題はなくとも、他の不具合を確認できる要素の一つです。
日ごろから、リザーブタンクの量を確認してトラブルが起きる前に対処できるように点検はしっかりしましょう。
また、交換の際のエア抜きがしっかりできていないと、容易にオーバーヒートになります。
少しでも不安を感じる場合は、整備工場やカー用品店で交換してもらうようにしましょう。