一時期、「リコール」という言葉がニュースを騒がせた時期がありました。
2000年代初頭に三菱自動車工業の乗用車やトラック・バス部門で発覚した企業ぐるみで行われていたリコール隠しが世を騒がせました。
乗用車のエンジン等重要部品に不具合があったり、トラックの車輪が車両から脱落して死者が出てしまうなどの大きな事故が発生するまで、リコールを当時の運輸省に届け出を行わなかったことが問題となった事件です。
リコールとは?
リコールとは、自動車が設計段階や製造過程が原因で車両に不具合が発生し、その不具合が重大な事故を引き起こす可能性がある場合や保安基準を著しく満足しない場合に国道交通省に届け出をして無償にて修理する制度のことです。
知らせは来るの?
リコールとなる不具合が確認された場合、メーカーは販売店などからの情報をもとに該当する車種、年式等に当てはまる購入者にはがき等で郵送でお知らせします。
はがきにはリコールの概要が書いてあります。
それ以外の場合では、定期点検や車検でディーラーや民間工場に入庫した際に知らせてもらえます。
リコールがあった場合、修理等に料金はかかりません。
また、期限もありませんのでリコールの修理を受けられなくなったり、修理代金を請求されたりすることはありません。
期限はありませんが安全や環境に大きな悪影響を及ぼす不具合のため、できるだけ早めにディーラーに入庫することをお勧めします。
リコールには種類がある?
リコールとは不具合があった場合に無償で回収・修理することを指しますが、この回収・修理にも実は種類があります。
三段階で種類があり、一番重いものが「リコール」です。
すでに説明しましたが、安全に明らかに悪影響を及ぼす、または大事故に直結する不具合、保安基準を大きく逸脱しており環境に著しく悪影響を及ぼす場合、リコールとなります。
続いて、「改善対策」という物があります。
この改善対策を行う場合でも国に届け出る必要があります。
設計段階や製造過程に起因する不具合で、リコールのように大事故や環境に対する悪影響はないものの、このまま放置しておくといずれ、リコールになる可能性がある場合に行われます。
そして「リコール」「改善対策」いずれにも当てはまらないものが、「サービスキャンペーン」というものになります。
これは自動車としての品質や機能性改善するために行われるもので、放置していても故障や事故になることはありません。
リコールと車検の話
リコール該当車両で対策を行っていない場合、車検に通るかどうかはグレーな部分です。
なぜならば、リコール対象の部品によって車検に影響する度合いが違うためです。
極端な話、例えばブレーキに関わる部品がリコールの対象となっている場合は車検に通らない可能性が非常に高いです。
逆に外装にかかわるリコール等の場合、安全には直結していないので通る可能性が高いでしょう。
いずれにしても、リコールの対策を行ったうえで車検に出すことが一番賢明な選択でしょう。
リコールはどうやってわかるの?
一般的に自動車メーカーは、ディーラーという特約店やメーカー自体が経営している販売店で自動車を販売しています。
またディーラーでは販売のみではなく、アフターフォローも行っています。
もちろん車検や法定点検などの業務もアフターフォローに含まれます。
一般的にユーザーの皆さんは乗っている自動車に故障または不具合(メーターに警告灯が点灯した等)が生じた場合、ディーラーに入庫します。
修理内容は、ディーラーからメーカーにフィードバックされ、次の開発車両に活かされていきます。
こうして自動車どんどん進化してきました。
この流れの中で、故障の情報は必ずメーカーに届くようになっているのです。
そしてメーカーには品質保証をつかさどる部署が必ずあり、そこで原因追及が行われます。
原因が設計段階や製造工程に起因するものであれば、リコールという形をとります。
冒頭でも少し書きましたが、2000年代初頭にあった三菱自動車の大規模なリコール隠しは、このディーラーから上がってきた情報を組織的に長年隠ぺいしていたことが明るみになったものです。
隠ぺいが表沙汰になったのは内部告発によるものでした。
国土交通省に匿名で三菱自動車の社員が通報したのです。
組織的に行われていた隠ぺいなので、こうした内部告発がない限り明るみにはならなかったのです。
二十数年続いたリコール隠しは、実際に不具合が要因である事故も起きており、社会的に信用を失うこととなりました。
また、このリコール制度が発足して以降、国に届け出を出さずに回収・修理を行っていたことも判明しました。
この一連の事件により運輸省の立ち入り調査がお行われ、副社長などの幹部が書類送検されたり法人としても略式命令を受けるなど、大きな事件となりました。
国土交通省からも、すべての不具合情報を開示するように求められましたが、古い情報については開示しませんでした。
その後三菱自動車はトラック・バス部門を分社化しますが、そこでもリコール隠しが行われ、このリコール対象の不具合によって2人の死者を出すこととなってしまいました。
他にも富士重工(現SUBARU)でも過去にリコール隠しがあったり、トヨタ自動車でもリコールを放置していたり、自動車製造業として社会的責任を果たしていない案件が多々ありました。
リコールは自動車メーカーだけ?
これまで自動車メーカーが行うリコールについて説明してきましたが、自動車メーカー以外でもリコールはあります。
自動車のみならず、暖房器具のリコールなどもあります。
また、サプライヤーという部品を製造するメーカーがリコールを行うことがあります。
エアバッグのリコールと言えば記憶に新しいと思います。
エアバッグやシートベルトで世界シェア20%を誇るTAKATAが、エアバッグの火薬に不具合があるとしてリコールを実施。
その規模は外車にも純正採用されていたこともあり、世界規模のリコールとなりました。
このように、製品を製造していれば、リコールが起きることは十分に考えられるのです。
まとめ
リコールは私たち消費者を守ってくれる大事な制度です。
この制度が無ければ、不具合があっても使用者が知ることができません。
リコールがないことが一番いいですが、万が一通知が来た際は速やかに修理を受けるようにしましょう。